2014年7月10日木曜日

ありのままのあなたで⑬

翌朝の朝ごはんの時間、
ママがサリーに話しかけました。
「あら、サリー。今日は黒いおくびで学校へ行くの?」
サリーはにっこり笑って答えました。
「そうよ、ママ。ピョンがね、
私の首は首飾りみたいで素敵だって言ってくれたもの。
ピョンってね、とっても優しくて素敵な子なのよ。」
その日、
サリーを学校へ見送るパパとママの顔は、
とっても幸せそうでした。
二人は、
幸せそうに微笑みあい、
サリーの姿が見えなくなるまで、
ずっとずっと、
手を振り続けました。
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ありのままのあなたで⑫

ピョンは、
まっすぐにサリーの目をみて、
すこしだけ大きな声でいいました。
「私はそのままの、サリーのほうが素敵だと思うわ。」
サリーはびっくりしました。
この黒い首を素敵だと言ってくれる子がいるなんて。
そしてサリーは思い出しました。
鏡の前で泣き疲れて眠ってしまったあの日、
眠り行くなかで、
ママがささやいていたあの言葉を。
「かわいいサリー、あなたはそのままでいいのよ。」
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ピョンはつづけて言いました。
「私は自分の体が黒いこと、
とっても誇りに思っているわ。
人がなんと言ってもね。
とってもツヤツヤなのがわかるし、
目だってぱっちりみえるでしょう。
それにね、
私の友達は、
みんな私の心が大好きだって言ってくれるわ。
私のまわりには、
私の体のことで意地悪をいう人なんていないの。
それってとっても幸せなことだと思っているわ。」
サリーはピョンを素敵だなぁと思いました。
そして言いました。
「ピョン、私と友達になってくれる?」

ありのままのあなたで⑪

帰り道のこと、
サリーはピョンにすべてを打ち明けました。
子供のころに、
黒い毛を馬鹿にされて、
悲しかったこと。
自分がダメな子なんだと思ったこと。
黒い毛を隠して学校へ来ていたこと。
本当は、
いつかはみんなにばれてしまうのではないかと、
ずっとびくびくしていたこと。
友達と遊んでいても、
いつも不安だったこと。
そして、
本当の自分を誰かに知ってもらいたかったこと。
だけど、
知られてしまったら、
友達がいなくなってしまうんじゃないかと思って、
誰にも言えなかったこと。
すべてを聞いたあと、
ピョンはやさしく笑って言いました。
「ねぇ、サリー。
私はあなたの黒い毛ってステキだと思うわ。
なんだか首飾りみたいで、
とってもおしゃれ。
それに、
本当の友達ってね、
そのままのサリーを好きでいてくれるものよ。
サリーの首が黒いだけで、
いじめたり嫌ったりする子なら、
それは本当の友達じゃないわ。
サリーがそれでも、
仲良くするために自分の首を塗り続けるなら、
それでもいいけれど。
だけど・・・」
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ありのままのあなたで⑩

そのとき、ドンっと音がして、
サリーは転んでしまいました。
誰かにぶつかったようです。
「どうしたの?大丈夫?」
顔をあげると、
そこには隣のクラスのピョンが立っていました。
黒ウサギの、あの子です。
そのとき、こころの中でプチンと何かがはじける音がして、
サリーは大きな声で泣き出してしまいました。
もう我慢ができなくて、
ピョンに抱きついて、
わんわん、わんわんと泣き続けました。
ピョンは何も聞かずに、サリーを抱きしめてくれました。
まるでママみたいに。
 その日、教室に戻ったサリーは、
クラスメイトの視線やひそひそ声を聞きながら、
とても辛い一日をすごしました。
誰も、サリーに話しかけてはくれません。
それでもサリーは一日頑張って授業を受けました。
なぜなら、今日はピョンと一緒に帰る約束をしていたからです。
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ありのままのあなたで⑨

それからしばらくたった朝のことです。
またもサリーは大慌てです。
白い絵の具が、ほとんど残っていないのです。
一生懸命広げて塗ってみても、
黒い毛は灰色にはなるものの、
白くはなりません。
たくさんおしろいをはたいても、
白くなりません。
(学校に早く行って、またチョークを塗ろう)
仕方なく、サリーはそのまま学校へ行くことにしました。
そしてクラスで一番に学校に着いたサリーが
チョークを手にして首にあてたその時、
後ろから声がしました。
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「おはよう、サリー。なにしてるの?」
振り返ると、スノーが不思議そうにサリーと、
サリーの手の中のチョークを見つめていました。
そして、サリーの首をみて、
スノーは大きな声で笑い出したのです。
「サリー、何それ!おかしいわ。
サリーの首って黒いのね。
そうやって、チョークを塗って、
私たちをだましてたんだわ。」
そう言って、スノーはげらげらと笑い転げます。
そうしているうちに、
他のクラスメイトたちも登校してくる時間になってしまいました。
スノーが大きな声で、
みんなに話すので、
サリーはみんなの笑い物になってしまいました。
恥ずかしくて、
悲しくて、
サリーは教室を飛び出しました。
後ろからみんなの声が追ってくるようなきがして、
耳をたたんで、
目をつぶって廊下を走りました。
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ありのままのあなたで⑧

部屋に戻って、鏡をのぞくと、暑い帰り道を走ったせいでしょう。
絵の具もチョークもほとんどとれ、
サリーの首には黒い毛がくっきりとみえていました。
サリーは鏡の中の自分に話しかけました。
「どうして、私は真っ白じゃないんだろう。
どうしてダメなウサギなんだろう。
こんな私、大嫌い!!」
サリーが悲しくなって、泣いていると、
ママが部屋に入ってきて言いました。
「サリーどうしたの?」
サリーはママに心配をかけたくなくって、
真っ赤な目で頑張って笑いながら言いました。
「ううん、ママ、何でもないよ」
ママはそっと、サリーをやさしく抱きしめてくれました。
ママの腕の中があんまり気持ちがよいので、
泣き疲れたサリーはそのまま眠ってしまいました。
サリーの頭をなでながら、ママは静かにサリーにつぶやきました。
「ママのかわいいサリー、
あなたはそのままでいいのよ。
そのことにどうか早く、気がついてちょうだい」
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ありのままのあなたで⑦

(この黒い毛をなんとか隠さなきゃ!!
ダメな子だって、みんなにわかっちゃう。
スノーに嫌われちゃう。)
絵の具はおうちに置いたままです。
(白いもの。白いもの。・・・
あっ!!そうだ。
教室にチョークがあるわ!!)
サリーは急いで、誰もいない教室へ戻り、
首にたくさんチョークを塗りました。
 無事、サリーの首は真っ白になったのですが、
次の算数の時間も、国語の時間も、
サリーの心臓はドキドキ、バクバク。
チョークが取れてしまうんじゃないかと、
ずっとずっと不安です。
授業が終わると、いちもくさんにお家へ走って帰りました。
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